職場の友人との、こんな何気ない会話から始まりました。
私「ボーナス何に使うん??」
友人「保険の一時払いで50万円必要やからそれで終わる〜」
びっくりしました。保険の一時払いで50万円?
なんの保険か聞いてみると、返ってきた答えは「外貨建て保険」。しかも「外貨建ての介護保険」。
やんわりと「それ、騙されてるで……」と伝えてみたのですが、友人の返事はこうでした。
「もう少しやってたら元本に戻るし、円安やから大丈夫」
「なんで保険でお金増やすん?増やすんなら投資で増やしたらええんちゃうん?」と話しても、友人はまだ続けるつもりのようでした。ただ、最後にこう漏らしたんです。
「保険の内容もはっきりとわからへんし、めんどくさいしな〜……」
これが一番の問題だと思いました。中身がわからないまま、毎年何十万円も払い続けている。
そこで私はこう伝えました。「一回さ、保険の中身わかる証書とか契約書とか約款とか見せてよ!どんな保険なのかすぐにわかるで」
友人は信じて渡してくれました。そこからAI(Claude Code)を使って約款と保険証券を全部読み解いた結果、想像以上のことがわかったんです。
💡 ここがポイント
結論から言うと、友人は8年間で約550〜590万円を払い込み、解約して戻ってくるのは約393万円でした。差し引き160〜190万円のマイナスです。しかも、このまま続けると残り24年でさらに約1,800万円を払い込む契約でした。
わかったこと:契約は1つではなく「3つ」だった
まず驚いたのが、友人が加入していたのは1つの保険ではなく、米ドル建ての保険3件だったことです。しかも、すべて同じ日に契約されていました。
| 契約① | 契約② | 契約③ | |
|---|---|---|---|
| 種類 | 米ドル建終身 | 米ドル建終身 +特定疾病特約 | 米ドル建 介護保障付終身 |
| 保険金額 | $100,000 | $20,000+$30,000 | $100,000 |
| 払込期間 | 32年 | 32年 | 15年 |
| 年間保険料 | $1,452.68 | $866.66 | $2,591.45 |
⚠️ ここが問題です
3件合計の年間保険料は$4,910.79。1ドル155円で換算すると年間約76万円です。ボーナスが消えるのも当然でした。しかも①②は払込期間が32年。還暦を過ぎるまで払い続ける設計です。
1回の面談で3件同時に契約している時点で、友人のために設計されたというより、売る側の都合で組まれた可能性を感じました。
8年間の実績:払った額の64%しか戻らない
証券に記載されている解約返戻金と、実際に払い込んだ額を突き合わせました。契約から8年が経過した時点の数字です。
| 契約 | 払込済み | 解約返戻金 | 損失 | 回収率 |
|---|---|---|---|---|
| ① | $11,621 | $8,440 | ▲$3,181 | 72.6% |
| ② | $6,933 | $3,676 | ▲$3,257 | 53.0% |
| ③ | $20,731 | $13,280 | ▲$7,451 | 64.1% |
| 合計 | $39,286 | $25,396 | ▲$13,890 | 64.6% |
円に直すとこうなります。
| 項目 | 金額(概算) |
|---|---|
| 8年間で払い込んだ円の総額 | 約550〜590万円 |
| いま解約して戻ってくる額 | 約393万円 |
| 差し引き | ▲約160〜190万円 |
友人は「もう少しやってたら元本に戻る」と言っていましたが、8年払って回収率は64.6%。元本に戻るどころではありませんでした。
なぜ元本割れするのか?払った保険料の行き先
ここが一番わかりにくく、そして一番大事な部分です。
「保険料を払っている=全額が積み立てられている」と思っている方が多いのですが、これが大きな誤解です。実際には、払った保険料は3つに分解されます。
年間保険料 $2,591(契約③の場合)の内訳
| 行き先 | 割合 | 年額 | 戻ってくる? |
|---|---|---|---|
| 積立部分 | 約64% | 約$1,660 | 戻る |
| 販売手数料・運営費 | 約20% | 約$520 | 消える |
| 保障コスト(死亡・介護) | 約16% | 約$415 | 消える |
⚠️ ここが問題です
つまり、払ったお金の3分の1以上は最初から戻ってこない前提で設計されています。この「積立に回らない部分」の存在が、販売時にはほとんど強調されません。
特に最初の2年間が厳しい
保険会社は、契約が取れた時点で代理店に手数料をまとめて支払います。そのため、契約初期の解約返戻金はこうなります。
| 経過年数 | 解約返戻金 | 意味 |
|---|---|---|
| 1年目 | $0 | ほぼ全額が販売コストと保障費用に消える |
| 2年目 | $0 | まだ回収できていない |
| 3年目 | $1,290〜 | ようやく積立が始まる |
2年目までに解約すると、払ったお金はまるごと消えます。
「低解約返戻金型」という、もう一つの罠
友人の契約には、すべて「低解約返戻金型」という但し書きがついていました。
これは、保険料を払い終わる前に解約すると、本来の解約返戻金の70%しか受け取れないという仕組みです。
| タイプ | 積立額 | 払込期間中に解約すると |
|---|---|---|
| 通常の終身保険 | $10,000 | $10,000 |
| 低解約返戻金型 | $10,000 | $7,000(30%カット) |
⚠️ ここが問題です
友人の契約①②は払込期間が32年です。つまり32年間ずっと「解約したら30%カット」が続くということ。これは事実上、途中でやめにくくする仕組みとして働きます。「やめたら損だから続けるしかない」という心理に追い込まれるわけです。
為替リスクは、全部こちらが負う
友人は「円安やから大丈夫」と言っていました。確かに今は円安なので、ドルの解約返戻金を円に換えると増えます。
でも、ここで冷静に考えてほしいことがあります。円高になったらどうなるのか。
| 契約者(友人) | 保険会社・代理店 | |
|---|---|---|
| 為替リスク | 全部負う | 負わない |
| 元本割れリスク | 全部負う | 負わない |
| 販売手数料 | — | 確実に受け取る |
| 為替スプレッド | 毎回支払う | 確実に受け取る |
気づきにくい「為替スプレッド」
円で保険料を払うたび、そして解約金を円で受け取るときにも、為替手数料が発生しています。
年間$4,911を払っている友人の場合、為替だけで年間およそ6,300円。32年続ければ20万円以上になります。保険料とは別に、静かに引かれ続けているコストです。
同じ8年間、インデックス投資だったら?
ここが一番きつい話です。友人が保険に払った同じお金を、そのままインデックスファンドに積み立てていたらどうなっていたか。
| 選択 | 8年後の資産(概算) | 保険との差 |
|---|---|---|
| 外貨建て保険(実際) | 約393万円 | — |
| 日本株インデックス | 約692万円 | +約300万円 |
| 米国株インデックス | 約820万円 | +約430万円 |
⚠️ この試算について
過去の相場を前提にした概算です。株式投資には元本割れのリスクがあり、この8年がたまたま良い相場だっただけという見方もできます。ただし保険の場合は「販売手数料と保障コストで3割以上が最初から差し引かれる」ことが構造的に確定しているのに対し、インデックスファンドの信託報酬は年0.1%前後です。このコスト差は相場に関係なく効いてきます。
そもそも、友人にこの保障は必要だったのか
ここで根本的な話に戻ります。友人は公務員です。共済組合に加入しています。つまり、こういう保障がすでにあります。
| 万が一のこと | 公的な保障 | 保険で備える必要 |
|---|---|---|
| 死亡 | 遺族厚生年金+遺族基礎年金 | 低い |
| 重度障害 | 障害厚生年金+障害基礎年金 | 低い |
| 要介護 | 公的介護保険(要介護2〜) | 低い |
| 病気で長期休職 | 傷病手当金(給与の2/3・最長18か月) | ほぼ不要 |
⚠️ ここが問題です
保険が本当に必要なのは、自営業やフリーランスなど公的保障が薄い人です。公務員は日本で最も社会保障が手厚い層のひとつ。最も保険の必要性が低い人に、最も割高な商品が3件も売られていた——これが今回の構図でした。
友人に伝えたこと
数字をすべて出したうえで、私はこう伝えました。
💡 ここがポイント
「160万円損した」ではなく「これ以上の損失を止めた」と考えてほしい。今解約すれば損失は確定するけれど、このまま24年間払い続けたときの機会損失のほうが、はるかに大きい。
そして、解約を勧めるにあたって注意点も一緒に伝えました。
- 解約前に、保障の穴が本当に問題ないか確認する(公務員なら公的保障で足りる可能性が高い)
- 健康状態が変わっていると、別の保険に入り直せない場合がある
- 元本割れしているので、解約時に税金はかからない(利益が出ていないため)
- まず保険会社に電話して、現在の解約返戻金の正確な額を確認する
ちなみに友人の契約は、解約金を円で受け取る特約がついていませんでした。そのままだとドルで戻ってくるため、受け取り方法も含めて確認が必要でした。こういう細かい点も、約款を読まないと絶対にわかりません。
いま加入している方へ:確認してほしい5つのこと
もしあなたが外貨建て保険や貯蓄型保険に入っているなら、まずは中身を確認してみてください。
| 確認すること | どこを見るか |
|---|---|
| ① 今解約するといくら戻るか | 保険証券の解約返戻金表/保険会社に電話 |
| ② これまでいくら払ったか | 年間保険料 × 経過年数 |
| ③「低解約返戻金型」と書いていないか | 保険証券・約款の商品名 |
| ④ 払込期間はあと何年か | 保険証券 |
| ⑤ 円で受け取れるか | 「円換算支払特約」の有無 |
①と②を比べるだけで、回収率がわかります。友人の場合は64.6%でした。
💡 ここがポイント
保険証券が見当たらなくても、契約者番号がわかれば保険会社のホームページから約款をダウンロードできます。今回もそうやって取り寄せました。「めんどくさい」の壁さえ越えれば、中身は必ずわかります。
まとめ:わからないまま払い続けるのが一番こわい
- 払った保険料の3割以上は積立に回っていない(販売手数料・保障コスト)
- 最初の2年は解約返戻金がゼロという設計
- 低解約返戻金型は、払込期間中ずっと30%カットが続く
- 為替リスクは契約者が全部負う。保険会社は負わない
- 為替スプレッドが往復2〜4円、静かに引かれ続ける
- 公的保障が手厚い人ほど、そもそも必要性が低い
私は保険そのものを否定するつもりはありません。ただ、「お金を増やす目的」で保険を選ぶのは構造的に不利だと考えています。増やしたいなら投資、備えたいなら掛け捨て。分けたほうがシンプルです。
💡 わからないものに、お金を払い続けない
友人は悪くありません。約款は分厚く、専門用語だらけで、普通は読む気になりません。でも今はAIに読ませれば数十分で構造を把握できます。「めんどくさい」で放置した8年間の代償が160万円だったとすれば、今日の数十分は間違いなく価値があります。
⚠️ 最後に大切なこと
この記事は、あくまで友人1人のケースを実際の数字で検証した記録です。私はFP(ファイナンシャルプランナー)ではありません。契約内容は一人ひとり違いますし、解約が常に正解とも限りません(健康状態によっては入り直せない、相続対策として意味がある、など)。実際に判断する際は、必ずご自身で数字を確認し、必要に応じて専門家にご相談ください。この記事は特定の商品や会社を批判する目的ではなく、「中身を知ってから決めましょう」という提案です。

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